「心筋梗塞」特集:健康を考える
気になった一般医療ニュースから
特集:健康を考える 心筋梗塞 桜橋渡辺病院内科部長・岡村篤徳さんに聞く
心臓疾患は日本人の3大死因の一つ。特に心臓を「冠」のように覆った冠動脈の一部が狭くなる「狭心症」や、狭心症が進行して冠動脈がふさがる「心筋梗塞(こうそく)」は発症件数が多く、しかも恐ろしい病気として認知されている。「虚血性心疾患」と呼ばれる狭心症と心筋梗塞の主因は、生活習慣病に由来する「動脈硬化」だという。循環器専門病院として長い歴史を持つ「桜橋渡辺病院」(大阪市北区)心臓・血管センター冠疾患科の岡村篤徳科長(兼内科部長)に虚血性心疾患の特徴、発見、治療、そして予防について聞いた。【聞き手・高田茂弘】
◇発症、すぐに的確な手当てを--桜橋渡辺病院内科部長/心臓・血管センター冠疾患科長、岡村篤徳さん
◇動脈硬化に起因、すべては生活習慣病から
----狭心症、心筋梗塞は急に胸が痛くなる病気だと聞きます。
岡村 狭心症は階段を上がったり急ぎ足で歩いたりした時、胸に痛みが走る、という症状が表れます。痛みは5分ほど。さらに、冠動脈の一部が血栓で詰まってしまう心筋梗塞になると突然、胸の中央部が締め付けられるような強烈な痛みが生じ、それが30分以上続きます。左腕、肩、あごに痛みが伴うこともある。胸を押さえて苦しんでいる場合はまず心筋梗塞を疑い、ためらうことなく救急車を呼んでください。
----痛み以外は?
岡村 患部が右側(右手側)の冠動脈の場合、痛みを伴わず、冷や汗や吐き気だけを訴えるケースもあります。右側での発症の比率は30%ほど。通常は救急隊員もこれを心筋梗塞と判断できますが、時折、循環器科以外で受診して治療が遅れることもあります。心筋梗塞は15%が病院外で心停止、循環器専門病院に運ばれた場合でも6%が亡くなるという重篤な疾病なので、発症時からの的確な手当てが不可欠。冠動脈が詰まると、心臓の筋肉が急速に壊死(えし)に向かってしまうからです。
----診断は?
岡村 狭心症の段階での診断が重要です。これまでは通常、負荷心電図と心筋シンチ検査で診ていました。しかし、これらは冠動脈を直接みるものではなく、正確さの点で不十分。これに対し、臨床現場では、数年前から「MDCT」という新方式のCT(コンピューター断層撮影)による診断が始まっています。CTを用いた診断は他の疾病で以前から普及していますが、撮像の速度や解像度が近年著しく向上し、心拍変動にも対応できるようになりました。MDCTによる診断は30分ほどで、診断の見落としは1%以下。石灰化の診断から動脈硬化の進行状況も的確につかめます。
----治療は?
岡村 手術治療にはカテーテルとバイパスがあります。いずれを選ぶかは、インフォームド・コンセントを踏まえ、担当の専門医が患者さんや家族と話し合って決めます。
----カテーテル手術は血管に風船を入れる、という……。
岡村 足の付け根や手首の血管から太さ2ミリ、長さ10センチ程度のシースという管を挿入し、そこからガイドワイヤ(極細の針金)を患部まで進入させます。そのワイヤをレールとしてバルーン(超小型の特殊な風船)を進め、膨らませて冠動脈を広げ、さらにステント(筒)と呼ぶ金属製の網状チューブを入れて血管の広がりを安定させます。手術は1-2時間で終わり、入院も4-5日。この手術はこの20年ほどで臨床現場に広がりました。私たちの病院では、バイパス手術を1とすれば、カテーテルは9という頻度。欧州には「生体吸収型」という、ステントがいわば血管と同質化することを狙う手法の実用化試験も行われています。
----バイパスは自分の体の血管を使う、という手術ですね。
岡村 胸、足や手の血管を必要な長さだけ切り出し、冠動脈の患部の先の正常な部分につなぐという、カテーテル以前から実施されてきた手術です。私たちの病院では、冠動脈に複数の患部がある場合や、患部が冠動脈の根元にある場合などに実施しています。手術は3-4時間、入院は3週間ほどです。
----予防策を。
岡村 冠動脈が狭まってしまう主因は、血管の内側にコレステロールなどの脂質が付着する「動脈硬化」です。その主な原因は高血圧、高脂血症、糖尿病などの「生活習慣病」。生活習慣病は栄養バランスを欠いた脂肪過多の食事、不規則な生活、運動不足、喫煙などに由来します。つまり、生活習慣病に陥らないよう心掛けることが、狭心症に始まる虚血性心疾患へのリスク対応といえます。
----心筋梗塞に陥る危険を避けるには?
岡村 狭心症の狭まった血管をふさぐのは、血液内の血小板が固まった「血栓」。これが大きくなって血流を遮断し、心筋梗塞を起こします。血栓ができやすくなるのも生活習慣病。心筋梗塞の予防は狭心症にならないよう、そして心筋梗塞の前段階にあたる狭心症を確実に治療することです。
----季節は秋、さらに冬へと向かいます。
岡村 寒くなると発症が増える傾向があります。寒さや室内外の急な温度変化は、血栓をできやすくし、発症のリスクを高めます。狭心症も心筋梗塞も一度罹患(りかん)した方の「再発」の危険度は、そうでない人の5倍です。周到な予防と治療・警戒が必要ですね。
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