子供のホスピス
気になった一般医療ニュースから
◆子どものホスピス 英国生まれの施設。その役割は。医療ナビ
◇難病の子と家族、ケア
◇一時預かりで介護者に休息 みとり、遺族の支援
英オックスフォードで生まれた施設「子どものホスピス」。難病の子とその家族を支えるための施設だが、日本ではなじみが薄い。広く知ってもらおうと、関係者を集めた交流セミナー(毎日新聞社など後援)が10月、大阪市であった。主催した実行委員会の小児科医らは「日本にも必要な施設」と訴えている。
セミナーのために、世界初の子どものホスピス「ヘレン&ダグラスハウス」創設者のフランシス・ドミニカさんや同ハウスの医師、利用者らが来日した。
一般的にホスピスは末期がん患者などに終末期医療(ターミナルケア)を行う病棟を指すが、「子どものホスピス」はやや異なる。同ハウスのウイリアム・ソーントン医師は、主な役割として▽難病の子を預かり家族に休息を与える「レスパイトケア」▽亡くなる際のみとりのケア▽子どもを亡くした遺族のケア--を挙げる。同ハウスには理学療法士、作業療法士のほか社会福祉士や教師、医師もおり、チームで多面的なケアにあたる。
同ハウスは、元小児科の看護師で尼僧院長だったドミニカさんと、脳腫瘍(しゅよう)を患ったヘレンという2歳の女の子の家族との交流から誕生した。自宅療養を続けるヘレンちゃんの介護で両親が疲れ切っているのを見かね、ドミニカさんがヘレンちゃんを数日間預かることを提案。ヘレンちゃんが楽しい時間を過ごす一方、両親も休息をとれたという。
その後ヘレンちゃんは亡くなったが、この経験からドミニカさんは、家庭的な雰囲気で、余命が限られた子どもが過ごす施設の必要性を痛感、寄付を元に82年に18歳以下の子ども対象の「ヘレンハウス」を設立した。更に16-35歳を対象にした「ダグラスハウス」も設立された。現在、英国内に41施設があり、ドイツやオーストラリアにも広がっている。
兵庫県出身で、重い脳障害を抱えた長男(9)を育てるサナエ・バージェスさん(英国在住)は、健常者の次男ら家族4人で同ハウスを訪れるのをいつも楽しみにしており、「子どもの介護に孤独を感じることもある。ハウスに支えられている」と述べた。
余命の限られた難病の子は日本では約2万人とされる。しかし日本で同様の施設を設立するには課題も多い。06年に英国留学し、各地の施設を視察した大阪市立総合医療センターの多田羅竜平医師(緩和医療科兼小児内科)は▽年間3億-5億円の運営資金▽医療と福祉の両面にわたるレスパイトケアをどう位置づけるか▽死を連想する名称への抵抗感--などを挙げる。
多田羅医師は「行政と話し合いながら、運営母体となるNPO設立を目指したい」と話す。【高野聡】
◇自宅療養、心身に負担重く
難病の子を抱える家族は、慢性的な疲労を蓄積している。大阪市立総合医療センターが、自宅療養の指導・管理をした難病の子を持つ家族166人を対象に調査(回答数108人)したところ、睡眠時間5時間以下が66人と半数を超えた。「2時間」(3人)、「3時間」(4人)という人もおり、33人が介護のために1-3時間ごとに起床していると回答した。
身体や精神の疲労では、重い症状の子がいる家族ほど「体がだるい」「頭が痛い・重い」「何でもないことにイライラする」などに該当。子どもを泊まりで預かってもらうショートステイの利用は、38人が「必要だが、受けられていない」と答え、「サービスを受けている」14人のうち9人が内容に「やや不満」「かなり不満」と回答した。調査を担当した同センターの岡崎伸医師(小児神経内科)は「難病の子を抱えた家族の生活に関する調査は初めて。周囲が支える必要が浮き彫りになった」と話す。
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◇子どものホスピスの利用対象となる「生命を脅かす疾患」
▽根治療法が可能な病気
小児がん、心疾患など
▽治療により延命可能だが早期の死は避けられない病気
脊髄(せきずい)性筋萎縮(いしゅく)症、筋ジストロフィーなど
▽進行性で、治療は症状の緩和に限られる病気
ムコ多糖症、染色体異常など
▽不可逆的だが非進行性の病気
重度脳性まひ、頭部外傷後遺症など
※英国小児科学会による分類
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