前立腺がんのPSA検査 血液中の抗原量測定 早期発見に有効
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前立腺がんのPSA検査 血液中の抗原量測定 早期発見に有効 医療ナビ
2009年11月18日 提供:毎日新聞社
医療ナビ:前立腺がんのPSA検査 血液中の抗原量測定 早期発見に有効
◇欧米で死亡率減少
◇「見つけすぎ」過剰治療も 医師の判断重要
男性特有の前立腺がん。米国ではその死亡率が減少しているのに、日本では増え続けている。なぜか。そのカギはPSA(前立腺特異抗原)検査にあるようだ。
前立腺は精液の一部をつくるクルミ大の臓器。膀胱(ぼうこう)の下にあり、尿道が中を通っている。前立腺がんは血管を破壊して大きくなるため、前立腺に特有のたんぱく質(抗原)が血液中にもれてくる。その抗原の量を血液検査で測るのがPSA検査で、がんの疑いがあるか見分けることができる。
米国では86年からPSA検査が広まり、現在、50歳以上の男性の約7-8割が検査を受けている。その結果、90年代初めから、死亡率は減少している。オーストリアでは約9割の男性が検査を受けており、死亡率はほぼ半分程度に低下した。
一方、検診率が約1割と低い日本では死亡率が上昇し続け、昨年は過去最高の約1万人が死亡した(厚生労働省調べ)。PSA検査の長所について、伊藤一人・群馬大医学部准教授(泌尿器科)は「早期の段階で発見できるので、いろいろな治療法が選択でき、がんによる死亡率を低くすることができる」と話す。
一般に前立腺がんの発見は遅れやすい。尿の出が悪いと思いつつ放置していたら、がんが肺や骨に転移していたというケースが意外に多い。がんが進行しても、痛みなど自覚症状がないのが特徴だ。PSA検査を受けないと、患者の約3割は転移した状態で見つかる。一方、50歳以降、毎年、PSA検査を受けると、約9割はごく初期か局所のがんの状態で発見できる。
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治療には(1)がん組織を摘出する手術(2)放射線を当てる治療(3)男性ホルモンを抑えるホルモン療法、などがある。どの治療を選択するかは病気の進行具合、年齢、合併症の有無などを考慮して決める。だが問題は、がんが見つかっても、すぐに治療しなくてもよいおとなしい初期のがん患者が平均的に1割程度いることだ。これが早期発見・早期治療に伴う過剰治療の問題で、治療に伴って尿失禁や勃起(ぼっき)障害が起きることがある。
伊藤さんは「がんが小さくて悪性度が低く、PSA値が10以下なら、一定期間後に細胞検査を行うことを条件に、PSA値の変化を慎重に見ながら、とりあえず治療を待つことも選択肢の一つになる」と話す。
ここで大切なのは患者と医師の話し合いだ。過剰治療問題について、大阪府の市立豊中病院の今津哲央・泌尿器科医長は「PSA検査はすぐれたスクリーニング(判別法)だが、治療不要ながんを発見し過ぎる危険性が確かにある。検査を有効に生かすには、専門医師が治療の必要ながんかどうかを見極めることが大事だ」と専門医師の責任の重要性を指摘する。
厚生労働省によると、全国の自治体の約6割にあたる1163市区町村の住民検診でPSA検査を実施している。自己負担は500-2000円が多い。70歳以上は無料という自治体もある。尿の出が悪いなどの症状があって病院で検査を受ける場合の費用は3割負担の場合で420円だ。
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PSA検査と死亡率をめぐっては以前から、泌尿器医師と疫学者の間で論争が続いていた。今年3月、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に二つの相反する論文が掲載された。いずれもPSA検査を受けた人と受けていない人の死亡率を比較する初めての大規模な試験結果だった。欧州7カ国で約16万人を対象に実施した試験では、検査した人たちの死亡率が検査していない人たちより20%低い結果が出た。一方、米国で約7万7000人を対象に行われた試験では死亡率に差がなかった。欧州の追跡期間が9年(中央値)で米国の7年(中央値)より長かったほか、米国では検査を受けていない群に検査済みの人が交じるなどの問題点が指摘され、欧州の試験の方が信頼性が高いとの見方が強い。【小島正美】
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◇PSA検査
日本泌尿器科学会の検診ガイドラインによると、50歳以上の人に推奨。がんを疑う一般的な基準は1ミリリットルあたり4ナノグラム以上の数値。年齢別では50-64歳は3、65-69歳は3.5、70歳以上は4が基準だ。基準を超えたら、前立腺の細胞を調べる精密検査や触診を行い、治療の有無を決める。
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