骨と軟骨形成に小胞体たんぱく質が関与
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骨と軟骨形成に小胞体タンパク質が関与
Nature Cell Biologyに2つの論文を同時に発表
【概要】
細胞内の小胞体という構造物に含まれるタンパク質が骨や軟骨の形成に不可欠であることを解明した。骨粗鬆症や変形性関節症などに対する新しい治療法や薬の開発に応用が期待される。9月21日付けの英科学誌ネイチャーセルバイオロジー(電子版)に2つの研究論文を同時に発表した。
骨や軟骨の中にはコラーゲンを主体とするタンパク性成分が大量に含まれ、強固な構造を保つのに重要な役割を担っている。これまで骨軟骨タンパク質の産生と分泌の仕組みについてはよくわかっていなかった。
骨を作りだす骨芽(こつが)細胞や軟骨を作りだす軟骨細胞の小胞体に含まれるタンパク質「OASIS」と「BBF2H7」に注目し、それぞれを持たないマウスを別個に作成した。OASISがないマウスでは全身の骨の形成が、BBF2H7がないマウスでは軟骨の形成が極度に低下していることを発見した。いずれのマウスとも共通して、作りだされた骨軟骨組織の成分となる物質が細胞の外に出ることができず、小胞体の中にとどまり小胞体は大きく腫れ上がったような形を示すこともわかった。このことからOASISやBBF2H7はそれぞれ骨や軟骨の形成に不可欠であることが明らかになった。
この発見により骨および軟骨が作られる仕組みの一部が明らかになるとともに、研究成果を基盤とした骨軟骨疾患の治療薬開発や再生医療への応用にも扉を開いた。
【解説】
タンパク質の多くは細胞の中の小胞体で合成され、正しい形に折り畳まれることで正常な機能を獲得する。しかし細胞が様々な異常環境にさらされると、小胞体の働きに破綻を来たし、不完全なタンパク質が小胞体に大量に生み出される。細胞はこの様な異常事態を感知するセンサータンパク質を持っており、異常タンパク質の修復や分解を行うシステムを積極的に駆動させて異常タンパク質の毒性から細胞を守る。この機構に関わるタンパク質として「OASIS」と「BBF2H7」を研究グループが発見した。体の中でどのような働きをしているのかを明らかにするためにそれぞれの遺伝子欠損マウスを作成した。以下に各マウスの特徴について調べた論文の研究成果を示す。
OASISを欠損したマウスを作成すると、身体が小さく大腿骨や踵(かかと)にしばしば骨折がみられた。全身の骨を細かく顕微鏡で調べたところ、骨量の著しい低下を伴う全身の骨形成不全であることがわかった(図1)。OASISの欠損により何故骨の形成に障害を来したのかを調べたところ、OASISは骨の主要な構成タンパク質である1型コラーゲンを作る役割があることがわかり、OASISがなくなることで1型コラーゲンの産生が減り骨量の低下を招いたと考えられた。OASIS自体は骨を作りだす骨芽細胞の小胞体に存在する。OASISがないマウスでは骨のタンパク質成分が骨芽細胞の小胞体にとどまり、細胞の外に分泌されない。コラーゲンの産生低下と骨基質タンパク質の分泌障害が骨形成不全の原因であることがわかった。
BBF2H7を欠損したマウスは軟骨組織をうまく作れず、骨格の低形成を示した(図3)。このマウスの軟骨細胞では軟骨基質タンパク質が細胞の外に分泌されず、細胞の小胞体内に蓄積していた(図4)。何故小胞体が拡張したのかを詳しく調べたところ、BBF2H7には、輸送小胞の形成に必須のタンパク質であるSec23aの合成を促進する働きがあることがわかった(図5)。すなわち、BBF2H7が欠損したことでSec23aが極度に減少し、本来は細胞の外に分泌される軟骨基質タンパク質が小胞体内に留まり続けたことが、軟骨組織の形成障害につながったと考えられる。本研究成果は小胞体の機能が軟骨組織の形成に重要な役割を担っていることを初めて示したものである。
異常感知のたんぱく質…骨や軟骨作る働き
2009年11月16日 提供:読売新聞
細胞内で異常を感知するセンサー役のたんぱく質が、骨や軟骨の成分を作り出す働きのあることを、宮崎大医学部の今泉和則教授と大阪大歯学部の米田俊之教授らのグループが見つけた。骨粗しょう症や変形性関節症などの治療薬の開発への応用が期待される。
今泉教授らは、細胞内のたんぱく質の形を整える小胞体という小器官で、異常をチェックしているたんぱく質「OASIS」と「BBF2H7」に注目。骨を作る骨芽細胞や軟骨を作る細胞での働きを調べた。
遺伝子操作でOASISを作れないようにしたマウスは、体が小さく大腿(だいたい)骨などを骨折することが多く、全身で骨形成不全を起こしていた。詳しく調べた結果、OASISは骨を構成するのに重要なコラーゲンの一種を作る働きがあることがわかった。BBF2H7を欠いたマウスは、軟骨がうまく形成されなかった。
今泉教授は「二つのたんぱく質を活性化させる薬が開発されれば、骨や軟骨の強度を高めることができる」と話す。成果は科学誌ネイチャー・セル・バイオロジーに発表した。
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