新生児・乳児消化管アレルギー
医療ナビ:消化管アレルギー 生後まもなく嘔吐、血便などを起こす。
◆消化管アレルギー 生後まもなく嘔吐、血便などを起こす。
◇牛乳、母乳が腸炎誘発
◇他の病気と識別重要 治療用ミルクで症状改善
東京都世田谷区に住む女性(35)の長女(4)は、生後まもなく原因不明の血便が続き、新生児集中治療室に2カ月半入院した。「腸重積」など腸の病気が疑われ、さまざまな検査を受けた。
粉ミルクを与えるとぐったりして元気がなくなる。治療用ミルクに変えたところ、症状は改善。牛乳アレルギーで腸炎を起こしていたことが分かった。女性は「なかなか原因が分からず、いつ退院できるのか不安だった」と振り返る。
◇ ◇
国内では95年ごろから同様の報告例が急増している。ミルクや母乳を開始した生後まもない時期に血便、下痢、嘔吐(おうと)など消化器に異変が出る場合が多い。静岡県立こども病院の木村光明・感染免疫アレルギー科長は「患者の半数は生後1週間以内に発症する。生まれて最も早く起こるアレルギーといえる」と話す。
専門医らによる研究会は「新生児・乳児消化管アレルギー」との暫定的な病名をつけたが、「新生児・乳児食物蛋白(たんぱく)誘発胃腸炎」とも呼ばれる。同研究会が最近実施した東京都内の医療機関への調査(中間集計)では、発症率は0・25%。全国で年間2000人が新たに発症している計算になる。
食後1-2時間で湿疹(しっしん)や呼吸困難などの症状が出て「即時型」と呼ばれる食物アレルギーとは、発症の仕組みが異なるとみられている。即時型の場合、特定の食物成分が体内に入ると、血液中の「IgE」と呼ばれる抗体が過剰反応し、湿疹などを起こす。一方、消化管アレルギーは、免疫反応を調節する白血球の一種「Tリンパ球」が過剰に働き、腸に炎症を起こすと考えられている。「即時型」のように抗体が直接関与しないため、症状は6-12時間後に表れる「遅延型」とされる。しかし、詳しい仕組みは解明されていない。
◇ ◇
国立成育医療センターの野村伊知郎医師(アレルギー科)は「他の消化管の病気との識別が重要。炎症反応を示す数値が上がる患者もおり、敗血症など感染症とも間違われやすい」と指摘する。診断や治療が遅れれば、腸閉塞(へいそく)や成長障害を起こす恐れがある。研究会は診断治療指針案を07年に作成し、改訂を重ねている。
指針案によると、まず、腸重積や腸捻転(ねんてん)など緊急手術の必要性が高い病気でないことを検査で確認。その後、便の粘液や血液の検査、リンパ球刺激試験などの結果をもとに判断する。
ただ、これらの検査でも確定診断は難しい。野村医師は「現状では、疑いがあれば治療を開始し、経過を観察するのが望ましい」と話す。ミルクによるアレルギーであれば、母乳のみにするか、治療用ミルクに切り替える。研究会のデータでは、患者の1割程度は母乳のみで発症している。この場合も、治療用ミルクに切り替える。
こうした対応で多くは症状が改善し、2-3歳までには治まるという。世田谷区の女性の長女も、2歳ごろから牛乳や乳製品を食べられるようになった。
確定診断には、患者の体重増加を確認し、ミルクを微量に与える負荷試験が行われる。また、離乳食開始前に、米や大豆、小麦を少しずつ食べる負荷試験を行い体調の変化を観察する。他の食べ物でも症状を起こす可能性があるためだ。
生後まもなく発症するため、妊娠中に母親が牛乳を避ければ予防できるのではないかという考えが浮かぶ。しかし、同センター研究所の松本健治・アレルギー研究室長は「即時型の牛乳アレルギーは妊娠中に母親が牛乳を飲まなくても発症する。消化管アレルギーもその可能性が高い」と話す。【下桐実雅子】
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◇新生児・乳児消化管アレルギー(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸炎)
疑われる症状は、新生児期(生後1カ月以内)や乳児期早期に、嘔吐や血便、下痢、腹部膨満(腹部が張る)、哺乳(ほにゅう)力低下、不活発(元気がない)のいずれかの症状がみられた場合。体重増加不良、元気がないなどの症状のみで、嘔吐や血便、下痢の消化器症状がない場合も1割程度あり、注意が必要。(診断治療指針案より。研究会のホームページhttp://www.nch.go.jp/imal/FPIES/icho/index.htmlでみられる)
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