「手に山盛りの薬、毎日 うつ病」一般医療ニュースから
手に山盛りの薬、毎日 うつ病100万人/上
2010年7月27日 提供:毎日新聞社
こころを救う:うつ病100万人/上 手に山盛りの薬、毎日
◇症状改善せず処方増加/多面的な療法必要
うつ病を含む気分障害の患者数が、昨年末の厚生労働省の発表で初めて100万人を超え、104万人(08年10月時点)になった。12年前の2倍以上に達する勢いで、なかなか治らず苦しむ人も少なくない。治療の現場で何が起きているのか。【山本紀子】
手のひらいっぱいに盛った薬を口に押し込み、一気に水を流し込む。そんな仕草が「気持ち悪かった」と夫が打ち明けたのは、妻(37)のうつ病が治ってからだった。
首都圏に住むこの女性は勤め先で新しい仕事に追われていた25歳の時、うつ病を発症した。「たくさんの薬が出て、症状は悪くなるばかり」。眠れず夜中に頭をかきむしり、家にこもった。不規則な生活と薬の副作用で8キロ太り、休職続きで職も失った。社会とのつながりを断たれ、死を考えることもあった。
水泳、アロマセラピー、カウンセラー通い……。あらゆることを試し、うつ病関係の本も読みあさった。ある抗うつ薬だけは「効いた」と思えた。気持ちが落ち着いてくると、薬をやめたくなった。医師に「調子いいです」と訴えたが「現状で安定しているから」と減らしてくれない。
このままではずっと薬漬けだ。考えた末、「子どもがほしいので産婦人科のある病院に転院したい」と願い出た。紹介状を書いてもらった先の病院で頼み込み、徐々に薬を減らしてもらった。
「あなた、もううつ病じゃありませんよ」。今年4月、新任の主治医は最初の受診でそう切り出し、カルテを眺めて「薬を飲みすぎていたかもしれませんね」とつぶやいた。
うつを脱するまでに通った医療機関は8カ所。「医者は薬を飲むことしか教えてくれず、回復する方法は必死であがいて自分で見つけました」。12年間の闘病が何だったのかとの思いは消えない。
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「薬を飲んで休養すれば治る」と言われることの多いうつ病だが、「初めの薬がすっと効いて治るのは4割程度」と野村総一郎・防衛医大教授は言う。治療が長引くと多剤多量処方になりがちで、服用するほどにつらさが副作用のためなのか病気が悪化したのか、見極めが難しくなる。
抗うつ薬は低用量から始め徐々に量を増やすのが一般的だ。添付文書に記された標準投与量を上回る薬を投与する医師もいるが、京都大の古川寿亮教授は懐疑的だ。「有効性が高まることはなく、むしろ副作用が増えます」
いま国内で承認されている抗うつ薬は50種類を超える。しかし、うつ病の本当の原因は現在も解明されておらず、誰にでも効く特効薬はまだない。薬の効果についてもさまざまな議論があり、今年1月には米医師会誌に「軽~中等症うつ病への薬の効果は、偽薬と変わりない」との論文も発表されている。
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関東地方の30代男性会社員はうつ病を患い8年になる。副作用で攻撃性が出ることもある抗うつ剤を飲んだ時は、無性に上司を殴りたくなることがあった。音と光に過敏になり、カサカサいうスーパーのレジ袋の音が不快でならない。
母親は「薬が効いた実感はなく、副作用にばかり悩まされた」と話す。主治医に「副作用が出たようです」と訴えても「病気の症状です」と否定され、量も種類も増えていく。
息子がかかった病院は10カ所近く。母親は通院に付き添ってきたが「過労なのか本人の特質なのか、うつの原因を探ろうという姿勢を感じたことがない」。診察室で話していると、3分を過ぎたあたりで看護師にそっと肩をたたかれる。医療への不信感は消えず、今は運動と食事療法で回復を願う毎日だ。
各国のうつ病治療に詳しい慶応大の渡辺衡一郎専任講師によると、軽症のうつ病に対し、カナダでは心理療法と薬、豪州では心理教育、英国では医療費削減の目的もあって薬は推奨せず、考え方を変える訓練を勧める。
渡辺さんは言う。「治療の中心は薬物だが、他にも療法があるべきだ。患者さんが多重債務などを抱えていないか、周囲は病気を理解しているか、なども考慮しながらストレスを取り除かなければならない。日本でも今後は薬物療法と並び、心理療法や運動など自己回復力を刺激する多面的なアプローチが必要」
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