更年期 特集 女性の心理
更年期女性の心理
女性にとって、身体ばかりでなく心も大きく揺れてさまざまな課題が一挙に噴き出す更年期。立ち止まって「自分って、何だろう」と考え、これから先の人生の足固めをするチャンスです。
● 心理面の影響が強く身体に作用する更年期。 |
私たちの心は、生まれてから死ぬまで動いていて、どういう身体トラブルでも心は関係していますが、更年期はとくに心理面の影響が強く身体に作用する時期です。
更年期は、身体の不調に悩まされる人がたくさんいますが、これを心の状態を詳しくとらえ、体調との関わりを考え、心の問題を良く理解することで身体の不調を治すこと。こうした考えが、私たち臨床心理士の仕事の基本になります。
この特集を読んできたみなさんは、更年期にはホルモン分泌の変調が身体に影響を与えることは、すでに御存知でしょうが、もうひとつ、女性が赤ちゃんを産むという生殖機能を失う、つまり「女性でなくなる」という心理的な動きも、身体に大きな影響を及ぼします。生殖機能がなくなるということは、もちろん「女性でなくなる」ことではないのですが、そこを短絡的にとらえてしまって、不安や哀しみを強く感じる人が多いのです。またこの時期は老年期に向けての新しい課題が出てきます。すなわち夫とどういう関係であったか、自分の女性性が満足できたかというような課題です。
この時期には、もうひとつ「死」という問題があります。「死」というとまだまだと遠い話だとお考えでしょうが、「自分の人生はこれで良かったのだろうか」「自己肯定できるだろうか」というような、更年期女性が自分に向かって問いかける問題の中に、無意識的に、「死」という課題が立ちはだかっています。それは時に必要なことです。「死」という課題は、今現在をどう充実して生きるかを自分で考え、人生の指針になることがあるからです。
子育てを終わり、夫も定年を迎え、自分自身を見つめ直し、残りの人生を再構築していくこの時期。あなただけではなく誰しも不安や寂しさ、葛藤などに出会っていくものですが、そこにはどんな心理的要因が関わってくるのでしょう。
● 閉経にあたって、初経の時を思い出してみましょう。 |
閉経の前後10年間にわたる更年期は、女性にとって大きな人生の節目です。初経の時の鮮明な体験を思い起こせるように、閉経も深い心の中では大きな体験になります。初経と閉経は、心の体験として連続しているものなのです。
閉経にあたって、初経の時を思い出してみてください。初経、つまり女性として身体的に妊娠可能な準備に入ったとき、どういう体験ができたかが、この女性の生殖機能が終わりになるときに、どうその終わりを受け入れられるかということと関係してきます。何十年も前のできごとが、現在の自分と関係してくるところが、女性の身体の不思議で、おもしろいところです。
女性には、一人一人の「女性物語」があります。それを私たちは「女性性」と呼びますが、私たちの女性性は、母やそのまた母親である祖母、またその上の世代からと世代間での伝達があって、女性性の成熟度に影響していきます。そして人それぞれの女性性の質が異なってきます。
「女性性」という言葉は、聞きなれないかもしれません。具体的な症例に入る前に、「女性性」とは何か、整理しておきましょう。
まず、人間の心は日常に感じたり考えたりしている「意識」と、日ごろは感じたり気付いていない「無意識」とがあり、私たちの心は、この両者で織りなされています。
無意識にもいくつかの層がありますが、生まれてからは母親や祖母からプリントされるさまざまな心模様を、いろいろな事情で無意識に放り込みます。そのひとつの心模様に「女性性」「男性性」があります。女性は「女性性」だけではなく「男性性」をもっていますし、男性も同じく両者を併せもっています。
では「女性性」と「男性性」の違いはどこにあるのでしょうか。女性性は、生理的には妊娠出産をできる能力です。さらに大切なのは精神的な面で、ある物事の全体を認識し、経験し、受け止め、育てるのが女性性の本質です。やわらかさ、包み込むような優しさ、感情的、そして非合理性といった女性の心理的特性にもつながります。一方で男性性は、物事を分離し、弁別し、努力して創造するものです。両者の違いを端的に言えば、女性性は統合的であるのに対し、男性性は分析的です。
● 人生80年時代。更年期は生き方を見直す大きなチャンスです。 |
更年期という時期は、女性にとって自分を見つめなおすチャンスなのです。更年期には、身体の変調だけではなく、子供が進学や就職で巣立っていったり、夫の定年を迎えたり、両親の介護や死を体験したり、いろいろな生活環境の変化がある時期です。そんななかで、ふと立ち止まって「自分って何だろう、何だったんだろう」と考えることは、とても大切なことです。
納得のいかない人生、どこか無理があったり、本来の自分とは違う自分を感じるようでしたら、今なら、人生の再構築をする精神的エネルギーがあるはずです。じっくり自分のことを考えてみてください。
また「更年期障害」と片づけている身体の不調も、心の歪みからきているものかもしれません。身体の奥底から、「これからの老年期に向けて心と身体の準備をするように」と啓示を受けているのかもしれません。
人生の再構築といっても、難しく考えることはありません。自分が心地よいと感じられる豊かな時間を大切にし、少しずつ増やしていけばいいのです。よく「豊かな時間」というと、旅行に出かけたりカルチャーセンターに通ったりと、いつもと違うことを始めようとする人がいますが、「豊かな時間」というのは、じつはもっと小さくて身近なものなのです。たとえばいつも何気なく山盛りにしていたサラダを料理店を真似て眼に楽しく盛り付けてみる、そんなことでも「達成感」があり、家族が喜んでくれれば「豊かな時間」への第一歩になります。
ユングという心理学者は次のように言っています。「中年から老年にかけて、人間の成熟のために大切な時期が来る」。人生80年時代。これからの人生は、思春期からこれまでの人生と同じくらい長いのです。身体の不調を嘆く前に、初経にはじまる「女性性」の自分史を振り返り、自分の心の奥底に目を向けてみることを、ぜひお勧めしたいと思います。それはあなたに本物の「成熟」をもたらしてくれるものと、信じます。 (m3.comより)
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