腰痛にかかわる腰まわりの筋肉
1.腰まわりの筋肉
腰周辺の筋肉は、体の中心にある腰椎(腰部の背骨)への負担を軽減し、かつ腰椎を前後左右から支えて緩やかなS字カーブを保つ役割を担っています。
以下の様な要因で、筋肉の腰椎を支える力が弱まると、腰椎を構成する骨、軟骨、靭帯、関節などが大きな負荷によって劣化・変形し、腰痛を発生させます。
- 腰に悪い無理な姿勢をとったり、重い荷物や体重による負荷で腰への負荷が蓄積して筋肉が疲労する
- 老化や運動不足によって筋力が衰える
- 一部の筋肉だけ強かったり弱かったりすると、全体の筋力バランスが崩れる
◆重要な筋肉
特に重要な筋肉は、「腹筋」、「背筋」、「脊柱起立筋」、「大殿筋」の4つです。これらが背骨を支え、かつバランスをとりながら背骨の自然なS字カーブを保っています。いずれかの筋肉が衰えたり、強く働いたりすると、姿勢が崩れて腰痛の原因になります。また、これらは腰の筋肉のうちでも最も負荷がかかりやすいため、筋肉痛や捻挫など、疲労の蓄積による炎症性の痛みも起こりやすくなります。
そのほか「大腿四頭筋」や「ハムストリングス」といった太もも前後の筋肉は、骨盤を支えたり股関節の動きを制御する役割を持ちます。これらの筋肉の衰えやバランスの崩れも腰痛の原因となります。
◆イラスト図解
1.腹部の筋肉(腹筋)
- 「腹直筋(ふくちょくきん)」
お腹の中央を上下に走る筋肉。一般的に"腹筋"というと、この筋肉を指すことが多い。「体を前や横に曲げる」、「腰の回転」、「呼吸」などに関わる。腹圧によって背骨を前から支えたり、排便を促す働きもある
- 「内腹斜筋(ないふくしゃきん)、外腹斜筋(がいふくしゃきん)」
お腹の外側を上下に走る筋肉。皮膚に近い浅い部分を「外腹斜筋」、より深い層を「内腹斜筋」という。肋骨を含む胸部の骨(胸郭)を引き下げ、背骨を曲げると同時に骨盤を引き上げる働きをもつ
- 「鼠径靭帯(そけいじんたい)」
腹筋と下半身との境界をつくっている靭帯(繊維束)
2.背中の筋肉(背筋)とお尻の筋肉
- 「広背筋(こうはいきん)」
背中の表面を大きくカバーする背筋。肩から腰にかけて伸びており、上腕の骨と腰を結合している。腕を後ろや下に引きつける働きをする
- 「下後鋸筋(かこうきょきん)」
広背筋の、より深い層に位置する薄い筋肉。胸椎・腰椎と肋骨を結んでいる。肋骨を内側下方へ引っぱる働きをする
- 「外腹斜筋(がいふくしゃきん)」
お腹の外側を上下に走る筋肉。肋骨を含む胸部の骨(胸郭)を引き下げ、背骨を曲げると同時に骨盤を引き上げる働きをもつ
- 「胸腰筋膜(きょうようきんまく)」
仙骨の後ろに付着して、背筋を前後から包むとても丈夫な膜。広背筋や大殿筋とつながっている
- 「大殿筋(だいでんきん)」
腰の骨(骨盤)をおおうお尻の大きな筋肉。股関節の曲げ伸ばしや回転を行う役割をもつ
3.腰と背中の筋肉(深層)
- 「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」
背中から腰へ向かう太い筋肉で、体を前に倒した時に上半身の重みを支える役割を果たす
- 「大腰筋(だいようきん)」
腸腰筋(ちょうようきん)という骨盤まわりの筋肉の一部。お尻の筋肉を引き上げて骨盤の位置を正常に保ち、腰が曲がって猫背にならないようにする。また背骨や脊柱起立筋などの背中の筋肉を下から支える役割も持つ
※この2つの筋肉は特に疲労がたまりやすい。
長時間、立ちっぱなしや中腰、前かがみの姿勢をとっていると、筋肉が縮んだまま伸びにくくなったり、筋肉が傷ついて炎症を起こして痛みを発生させる(筋・筋膜性腰痛)。
4.下半身の筋肉
- 「腸腰筋(ちょうようきん)」
太ももを上げる役割をもつ骨盤まわりの筋肉。脊椎のS字カーブを支え、お尻の筋肉を引き上げて骨盤の位置を正常に保つ働きもつ。
腸腰筋の衰えは、腹筋・背筋のゆるみや股関節の動きの悪さをもたらし、脊椎のS字カーブが崩れて腰痛を招いたり、つまずきやすくなったりする。また骨盤がゆるんで内蔵が下がるため、冷え性や便秘の原因にもなる
- 「ハムストリングス」
太ももの裏面を作る筋肉郡の総称。この筋肉が衰えると、股関節がスムーズに動かなくなり、下半身を支える筋肉のバランスが崩れて太ももの裏側に痛みを感じたり、坐骨神経痛の原因になる
- 「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」
腰とひざをつなぐ太もも前面の4つの筋肉の総称。全身で最も強くて大きい筋肉。ひざから下の部分(下腿)を伸ばす役割をもつ
2.腰まわりの骨格
- 「背骨、脊椎(せきつい)、脊柱(せきちゅう)」
頭蓋骨の下から腰まで、体の中心を通る背骨は、脊椎や脊柱とも呼ばれる。
首の部分は「頚椎(けいつい)」、胸の部分は「胸椎(きょうつい)」、腰の部分は「腰椎(ようつい)」といい、腰椎の下には「仙骨(せんこつ)」と「尾骨(びこつ)」という骨が付いている。
背骨は一本の棒のような作りではなく、「椎骨(ついこつ)」というブロックのような小さな骨と、「椎間板(ついかんばん)」という軟骨組織が交互に積み重なってできている。また、正面から見ると左右対称な一本の棒のように見えるが、横から見ると緩やかなS字形を描いている。前後にバランスの良い3つのカーブを持っているので、全体としてバネのような弾力性を持つ。
こうした構造により、背骨は前後左右に柔軟に曲げることができ、また、体の重みのバランスをとったり、外部からの衝撃を柔らかく吸収・分散することができる
- 「椎骨(ついこつ)、椎弓(ついきゅう)、椎間関節(ついかんかんせつ)」
背骨を構成する「椎骨」の背中側には「椎弓」と呼ばれる突き出した部分があり、中枢神経である脊髄を守るように囲んでいる。椎弓同士は「椎間関節」という関節でつながって椎骨を支えている。椎間関節は背骨を前後左右にスムーズに曲げるために重要な役割を果たしている
- 「椎間板(ついかんばん)と靭帯(じんたい)」
椎骨と椎骨の間には、「椎間板」と呼ばれる軟骨組織がある。80%が水分で柔軟性と弾力性に富んでおり、椎骨同士がぶつからないようにしたり、骨への衝撃を和らげるクッションの役割を果たす。椎間板の中央には「髄核(ずいかく)」というゼラチン状の部分があり、それを「線維輪(せんいりん)」という軟骨が取り囲む構造をしている。
また、積み重なった椎骨と椎間板がズレないように、前後左右から5種類の「靭帯」で支えられている。靭帯は主にコラーゲンの繊維でできており、ゴムのようにとても丈夫で伸縮性のある帯状の組織。骨と骨とをつなぎ、関節の動く範囲を制限する働きもある。
椎間板が老化して弾力性を失い、そこに大きな負荷がかかると、椎間板が押しつぶされて中の髄核が線維輪を突き破ってしまうことがある。はみ出た髄核が神経を圧迫すると痛みやしびれが生じる(椎間板ヘルニア)
- 「骨盤(こつばん)、仙腸関節(せんちょうかんせつ)」
骨盤は「仙骨」、「寛骨」、「尾骨」という大きく3つの骨によって構成されており、背骨を下から支える土台となっている。そのため、骨盤のゆがみは背骨や頭蓋骨など、上半身すべての骨にゆがみなどの影響を与える。
仙腸関節は骨盤の「仙骨」と「腸骨」の間の関節。関節といっても継ぎ目のようなもので、3~5ミリの隙間しかあいておらず、靭帯によって強く結び付けられているためほとんど動かない。しかし仙腸関節のゆがみやねじれが続くことで慢性腰痛の原因になるという指摘もある。詳細は「腰痛と仙腸関節の関係」を参照
3.腰~下半身の神経
◆脊髄(せきずい)、馬尾神経(ばびしんけい)、坐骨神経(ざこつしんけい)
脊髄は脳から腰まで伸びる一本の太い神経(中枢神経)で、背骨の内側の空間(脊柱管)を通っている。脊髄からは無数の脊髄神経が手足に向かって分岐しており、脳からの命令を手足に伝える。
脊髄は腰のあたりから無数の神経の束である「馬尾神経」に変わる。脊髄や馬尾神経が圧迫されたり損傷を受けると、足の痛みやしびれのほか、下半身に様々な異常をきたすようになる(馬尾症状)。
馬尾神経は腰椎や仙骨の間を通って枝分かれしながら足先まで伸びていく。この一部がお尻のあたりで合流して一本の太い神経となっているのが「坐骨神経」。お尻から足先に向かって伸びる坐骨神経は1mもの長さがあり、腰から太もも、足先まで広い範囲の知覚をつかさどる。
椎間板ヘルニアなどにより坐骨神経が圧迫を受けたり炎症を起こしたりすると、神経の支配する広い部位で強い痛みやしびれが生じる(坐骨神経痛)
- 馬尾症状(ばびしょうじょう)
- 腰椎の内側には中枢神経である脊髄や、神経の束である馬尾神経が通っていて、下半身の運動、知覚、膀胱や腸の働きをコントロールしている。これらの神経が骨や椎間板の変形などにより圧迫・損傷されると、以下のような下半身の障害が現れてくる。これらの症状を馬尾症状と呼ぶ。
- 両足やお尻のまわりの"しびれ"や"麻痺(まひ)"
- 両足の筋力低下 → 「足に力が入らない」「足首のところで足を上げられない」「つま先立ちできない」
- 「しばらく歩くと足の痛みやしびれが増して歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる」を繰り返す(間欠性跛行)
- 膝の下やアキレス腱を叩いた時の反射的な動きが鈍る、足の裏の感覚がおかしくなる(足の感覚障害)
- 足に冷えを感じる
- 排尿・排便障害 → 尿が出にくい、尿がもれる(失禁)、尿の回数が増える(頻尿)、慢性的な便秘
- 股間に熱さを感じる、会陰部の異常な感覚、歩行中の勃起
http://aozora-youtsu.com/2021/11/post-c364.html
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