不妊/男性に原因3分の1/一般医療ニュース
「男性に原因」が3分の1:こうのとり追って 第2部・不妊治療を知る/2
2011年2月1日 提供:毎日新聞社
こうのとり追って:第2部・不妊治療を知る/2 「男性に原因」が3分の1
◇偏見や情報不足、早期受診の壁に
新婚当初から2人は、ある話題になるといつも険悪なムードになった。「第三者から精子をもらう方法もあるそうよ」「なぜそこまでして子どもが欲しいんだ」。東北地方の会社員の夫(36)は第2次性徴が起こる年ごろの変化が少なく、大人になっても射精したことがなかった。「子どもは無理」という告白を受け入れて結婚した妻(38)だが、「女として生まれたからには一度は子どもを産みたい」との思いは断ち切れなかった。
結婚から2年半が過ぎた08年の夏、夫が折れて非配偶者間人工授精(AID)の治療を受けることにした。治療に必要な「無精子症」の証明書を出してもらうため、国際医療福祉大病院(栃木県那須塩原市)を受診すると、男性不妊が専門の岩本晃明教授(泌尿器科)から意外な言葉をかけられた。「薬で治る可能性があります」
夫は、精子を作るために必要なホルモンの分泌に異常がある「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」と診断された。2000-1万人に1人の割合というごくまれな症例だ。性腺ホルモンを補充するため週3回、自宅で自己注射する治療を約1年間続けたところ、昨年3月までに精液が出るようになり精子も現れた。精子は数も運動率も十分で、岩本教授は「自然妊娠も不可能ではない」と説明した。夫婦は「治療の余地があるとは想像すらしなかった。男性不妊の情報はあまりにも少ない」と振り返る。
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不妊の原因は不明のケースも多いが、少なくとも3分の1は、精子が少ないなど男性側に原因があるといわれている。しかし、男性不妊専門の「恵比寿つじクリニック」(東京都渋谷区)の辻祐治院長(泌尿器科)は「昔から不妊の原因は女性にあるという誤解があり、それは今も続いている」と指摘する。辻院長のクリニックでも「婦人科系の不妊治療クリニックで妻が妊娠できなかった男性が、受診してくるのが現実」といい、男性不妊を最初から疑って来院するケースは多くない。
辻院長によると、男性不妊の75%は精子の数が少ないか動きが悪い乏精子症や精子無力症。精液中にまったく精子がない無精子症が15%で、10%は勃起障害、射精障害などだ。治療法としては、精子の状態をよくする薬物治療や、血流障害を治す手術などがある。近年は、無精子症の人でも顕微鏡を使いながら精巣から直接精子を取り出す治療法も進んでおり、「3-5割は治療によって何らかの効果が期待できる」という。ただ、多くの場合、症状が改善するまでに1年程度の時間がかかる。
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「一つでも精子があれば授精させられる時代が来て、不妊治療は変わった」。日本生殖医学会副理事長の市川智彦・千葉大教授(泌尿器科)は、そう話す。卵子に針を刺して精子を注入する顕微授精が不妊治療で行われるようになると、男性側の精子の数がごくわずかであっても、妊娠が可能になった。市川教授は「90年代より以前は、時間がかかっても泌尿器科で男性不妊を治療するニーズがあった。顕微授精ができるようになってから、男性不妊を取り扱う泌尿器科は減った」と語る。
日本生殖医学会が認定する生殖医療専門医388人のうち、約9割は産婦人科医が占めており、男性不妊を専門とする泌尿器科は35人と全体の1割にも満たないのが現状だ。
「IVF詠田(ながた)クリニック」(福岡市)の詠田由美院長(産婦人科)は、夫側に不妊の原因があると分かった場合、連携している泌尿器科を紹介している。しかし、そこでぱったり治療を中断してしまう患者夫婦も少なくない。男性不妊の事実を、夫が受け入れられないことが多いという。「男性にはプライドもあってつらいかもしれない。しかし、妻に年齢的な問題がないなら、じっくり精子を改善することで、より自然な方法での妊娠も期待できる」と詠田院長は話している。
(m3.comより)
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